《千葉詩話会》実施 報告 〈 I 〉
* 2023年 12月16日(土) 【千葉市中央コミュニティセンター6階 サークル室6 】
河上類「詩の範囲~どのようなものが詩と呼ばれてきたか」
河上類氏と池田久雄氏
河上 類さんの講演では、現在の文化全体のなかでの詩の位置や意味などを話しました。
広い視野から詩を捉え返そうといいう試みが刺激的でした。
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歩くということ 朝倉宏哉
四つん這いから
初めて立った幼な子が
両足を踏ん張り
不思議そうに周りを見ているように
おまえは
車椅子から立ち上がり
歩行器にすがり
百五十メートル先の
花盛りのアカシヤの木を見つめている
あそこまで歩けるか
きのうは途中で息が上がった
よろけるからだを
差し入れた椅子で支えた
悔しそうに顔をゆがめた
腕や股から枝のように生えていた
点滴の管を外して退院したのだ
これからは家で
身軽になったからだをリハビリするのだ
寝たきりにならないために
痩せて萎びた脚に温かい血を通わせるのだ
遠い遠い日 人類はアフリカ大陸で
四足歩行から二足歩行に移行して
劇的に進化したように
自分の二本の足でしっかり歩いて
新しい老後をスタートするのだ
ごらんよ
道行く人たちを
みんな歩いて移動している
歩くということは
生きている証しではないか
自力で自分を前進させるとき
からだのなかに張り巡らされた川を
血は淙淙と勢いづいて流れるだろう
ああ その調子
ひたすら ひたむき ひたぶる
おまえは無言で歩く
ひた ひた ひた と
花滴るアカシヤの木が近づいてくる
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* 2023年11月例会 第118回
【11月18日(土)千葉市中央コミュニティセンター 講習室3にて】
参加者;秋元炯 村上久江 石井真也子 池田久雄 中村妙子 根本明
講演 片岡伸「写真と詩(文学)の相似的関係」
片岡伸さんはいすみ市生まれ。写真家として房総をテーマにして写真集を刊行してきた。
2000年から詩に取り組む。2001年、写真20点と詩30点を合わせた詩集『陽炎』を刊行。
以降、写真ふたつの創作活動を行なってきた。
二つの表現方法がどう交わるのか話していただいた。
1. 写真とは 被写体を正確に記録し、その過去の時間や撮影者の動機(感情や感覚)も記録する。
空間(構図)と時間(偶然性)が結び合った結晶であり、その裏側にある何かを暗示させる。
また時間を圧縮させて過去と未来を提示できるものだ。 「意図しない偶然の表出」が写真の魅力である
2. 詩人や作家の写真との関わり ボードレールやプルーストのアンドレ・ブルトンの写真認識や作品との
関わり方を説明し、キリコ、ダリといった絵画、日本の瀧口修三などシュールレアリストを熱心に紹介した。
3. 写真と詩の表現の違いをレトリック、リズム、ポエジーなどの項目で対比した表を提示した。
…………片岡氏は表現の方法を極めて意識的に探りながら歩む独自な表現者であり、興味深い話だった。
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