千葉詩話会》実施 報告 〈 K〉

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2024年3月詩話会

   

      中央が松田悦子さん、その右が司会の片岡伸さん

 

2024年4月20日 4月例会報告
  
司会・秋元炯
出席・朝倉宏哉・池田久雄・樋口冨士枝・松田悦子・よしおかさくら・村上久江(村上記)

 

よしおかさくら詩集『プチフール一丁目に住みたい』を読む(2023年8月発行 発行所 明眸社)


 この詩集は著者の第1詩集。中・高生のころより詩を書いてきて現在はインターネットで詩を発表したり、同人誌に投稿されている。
 50歳近い著者、このへんで第1詩集をとまとめた意欲的で個性の光る詩集。さらに第2詩集へと余裕を感じさせてくれる35篇をおさめた詩集。
 詩集の題名となった「プチフール1丁目に住みたい」は一篇の詩でもあるが、プチフールすなわち小さなケーキがたくさん箱に入っている、
 そのケーキの並びが建物のように見えたところからプチフール一丁目に住みたいとなったそうだ。


 戦争体験記などで必ず出てくる嗜好品の制限、すなわち戦争が無いこととは嗜好品の存在そのものと著者は述べる。
  平和への祈りがこめられた詩集でもあろう。
 詩集のなかから著者が抜き出し持参してくれた作品7篇「プチフール一丁目に住みたい」、「NO」、「よる」、「海水浴」、
「微睡み」、「削り氷」、「月餅」について合評を行った。 

 「よる」は 全部ひらがなで丁寧に集中を高めて書かれている。
 (めをこらすいきものたちのといき)は詩を書く最も初歩的な感性がうかがえると(朝倉氏)。
 (やみはよるにくばられ/みちびきはあさにとどく)と、愛にも通じる表現と(朝倉氏)

 「海水浴」は ながれがゆるやかで優しく味わい深い作品。
 「微睡み」と「削り氷」は 古典をふまえた作品。著者に質問しなから作品を味わった。

 

詩集『プチフール一丁目に住みたい』
                 よしおかさくら

月餅

彼岸であるらしかった。 私は呑気にコンビニの袋をぶら下げて、歓迎の菓子が並べられた 
テーブルについた。いちばん長く住んだ家の長テーブルだった。思っていたより古びていて 、
思わず拭き掃除をした。母に会いに来たのに姿は見えない。買って来た月餅を開けて食べ た。
ひとりで先に食べるなんて! と怒られるつもりだった。ナッツの歯応え、コクのある
餡を味わっている筈だったが味はなかった。 大口を開けて、いくつも食べた。母は気配だ
けで嬉しさを表現している。怒られなくて嬉しいような、母が嬉しくて嬉しいような、嬉し
いのだからいいことにした。嬉しかったが何かを忘れている気がした。

よる


すこやかなねむりの つきのみちかけ
あしおとをたよりに おいかけても
おだやかなねいきの なみのみちひき
みうしなってしまう こいやみのなか
よるをみはっていなければと
めをこらすいきものたちのといき
つきあかりはふびょうどうに
さえぎられてねむりをうながす
ひんやりしたかぜのいやしが
たいきにはたらきかけてうたいだす
とつぜんではないかみなりが
あまつぶによりそってえだわかれする
やみはよるにくばられて
みちびきはあさにとどく

 

六角形の鉛筆に波はあって
雨のしぶきに塩辛さは無くて
風の気まぐれに故郷があって 羊羹の輝きに水はあって
羊羹の輝きに水はあって
木々の葉擦れに煌めきは似ていて
言葉の涙に波はあって

 

 

◆合評会参加作品

秋元炯「髭面」、池田久雄「所詮」、朝倉宏哉「あやとり」、樋口冨士枝「悲しかったこと」、
よしおかさくら「神」、村上久江「少年は」

  

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