《千葉詩話会》実施 報告 〈L 〉
第204回例会報告 発足14周年記念例会
2024年6月15日(土)13時から千葉市中央コミュニティセンター講習室2で、
千葉市詩話会の開始から14周年をを記念する例会を行なった。
司会は秋元炯さん。まず朝倉宏哉さんがここまでの会の経過を振り返る挨拶をした。
次に根本明さんが2011年5月、3・11東日本大震災直後に始めた会の意義と歴史を説明。
特別講師として迎えた野村喜和夫さんを紹介した。
会は初めての参加者が多く、盛り上がりを見せた。第2部で通常の参加者の自作詩朗読と合評。
最後に大掛史子さんが今日の会を締めくくる挨拶を行なった。
講演 野村喜和夫氏「斧間斗辺(オノマトペ)通信」の要旨
1 オノマトペは欧米とは違って日本語には多く多く使われる言葉です。
さらにオノマトペは日本の近代詩以降、重要な役割を担ってきた。
萩原朔太郎の詩「遺伝」における飢えた犬の遠吠え〈のをあある とをあある やわわ〉、「鶏」のなかの〈とをてくう とをるもう とをるもう〉の独創性。
宮沢賢治はオノマトペの宝庫です。「風の又三郎」冒頭の〈どっどど どどうど どどうど どどう〉は代表的な例。中原中也の詩「サーカス」のなかでのぶらんこの擬音〈ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん〉。 また那珂太郎の詩「繭」(詩集『音楽』)には〈ぎらら/ぐび/る/びりれ〉という語が、入沢康夫の詩「キラキラヒカル」はすべてカタカナで書かれ全体がオノマトペといっていい作品(江國香織にこの作品名をとった小説がある)。
2 『言語の本質』(今井むつみ・秋田喜美著 中公新書)はオノマトペを言語の核心的なものとして追及した本でなので紹介したい。近代言語学の創始者であるソシュールが提唱した共時的言語観(言語を体系として捉えその構造を解明しようとする)を踏まえて言語の起源に接近。抽象的な記号である言葉は身体的・感覚的なつながりをもつ。言語のはじまりは子どもや幼児にあり、オノマトペはそこに関わって来る。この本は欲をいえばオノマトペの詩的言語のも触れてほしかった。
3 講演タイトルとした作品「斧間斗辺通信」(野村喜和夫新詩集『パッサルパッサル』(思潮社)を配り朗読。
ⅰ(ちたちたちた)
めざめの音
ちたちたちた
まるで脳漿を水がつたってきたかのよう
砂礫よりも硬くかなしく
ⅱ(ギヨ)
斧間斗辺
楽しかったよ
斧間斗辺? どこそれ?
ほら耳の奥の迷路の
低周波の穂や蔓がひるひる伸びたりするあたり
ああ音の草だね
うんその草に
人の昼になりきれないぼくの
さりさりやきさらさらを絡ませて
最後はギヨ
巌
ギヨ
伏流の誰彼の肌まで寄り添ってきて
わめく光となって散ったよ
(以下 ⅲ(ぎら、ぐびら)の23行を略)
○自作詩朗読と合評
・石井槙美「能登半島地震」・山下佳恵「青いみかんと運動会」・植松礼子「○△□」・
常松史朗「のっぺらぼー」・よしおかさくら「卵焼き」「おまじない」・白井恵子「水音」・
松田悦子「水音」・片岡伸「ふり向けば」・池田久雄「前ってどっちだ」・樋口冨士枝「バイカウツギに魅せられて」・
村上久江「女に」・根本明「野草たち」・大掛史子「オノマトペもどき」・秋元炯「サル男」・朝倉宏哉「四行詩六編」
○参加者(上記以外)宮田直哉、黒田忠也、市原とし子、秋元炯、庄司進、酒木裕次郎、倉田武彦、渡辺めぐみ、河上真
(根本・記)
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