千葉市詩話会4-1    〈 4-2 4-3

 

詩話会冊子も4号となりました。

1月初めに出された緊急事態宣言がさらに延長されるかどうか現時点では
わかりません。が私たちとしてはしばらくはコロナ感染のリスクを回避する生活を
続けるほかはなさそうです。

こうした生活のなかで今号には特にコロナ感染問題の影響が題材としても内的な問題として
も顕著に表れだしていくようです。

「詩話会冊子」第4号から

 

太田奈江「夢で逢へども」

夢のいりぐちには
さくらは幼い木につかまり
懸命に泳いでいた

眠りの奥の記憶の山のあちこちには
まぶしいばかりのさくらの花が
豊かにあたりを埋めつくす 

つづく両側に魅せられたまま
天に伸びる
花雲に埋もれていると

小さな橇が待っていた橇に乗ると
ゆっくり進みながら
今日もやさしくお話をしてくれるあなたがいた・・・

   ⁂

声が切れた
お話 もう終わりなの?
顔をあげるとあなたはいなかった

時々逢えるあなたは誰なの
遠い世界の兄なの 姉なの
恋人なの

橇はいつしか透明になり
時間のいたずらだけが行き交って
わたしは泣き虫の迷子になっていた
かすみより淡い
過ぎし日の命のかけらを消しながら
わたしはふかい息をして今朝のめざめに焦っていた

  

 

岡田優子「眠る」

  

小さな部屋で
老いた猫のろびんが眠っている
三日も水を飲まず眠り続けている
見えない糸が 天から伸びて
ろびんの息を 手繰っている ゆるめている

家族は波立つ心をさりげなくかくし
それぞれの職場に出かけて行った
わたしも アネモネの鉢を
日なたに移したり 水やりをしたり

それから部屋をのぞいた
いつものように眠っている筈
でも違った
見えない糸は見えないまま消え去り
息はとだえていた
冬の日差しが移ろうように
頭から首へ 背から足へと
ぬくもりは失せていった

薄桃色の四季桜が咲いて
小高い山の上のお寺も明るんでいる
黒曜石の供養塔に
やさしく抱きとられたろびんが
安らかに眠っている

  

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