千葉市詩話会-5-3

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「詩話会冊子 第5号」の作品と4号への批評

  

 4月1日発行の「詩話会冊子 第5号」は作品が20人、感想・批評は5人から頂くという充実し、
また個性あふれる内容となりました。心を打つ作品が並びました。

ここから7人の詩作品(石井真也子、大島千世子、太田奈江、岡田優子、おさや川静子、白井恵子、長沢矩子の各氏)と、
大掛史子さん、七まどかさんの第4号への批評を掲載します。

3月21日に緊急事態宣言が解除されたものの、コロナは変異ウイルスもあって第4波がそこに来ているよう。
そこを踏ん張ってワクチン接種が順調に推移することを願い、冊子も次の6号で終え、
7月ごろには皆さんとお会いできればいいですね。

   

 昨日
         朝倉宏哉

昨日をつくる
陶工がろくろをまわし
両手で
粘土をこねるように

手のひらのぬくもりと
指紋のささやきに
粘土が感応して息づき
物語の産声があがり

すこしずつ すこしずつ
今日ができる
明日になれば昨日になる
今日ができる

血のかよう指と
しなやかな粘土が
祈りのかたちでふれあい
今日の姿と顔をつくり

やがて もっとたしかな
昨日の姿と顔になる
昨日をつくるのは
今日 今 此処 しかない

昨日をならべて
そのつらなりが人生だ
明日からやってくる今日をこめて
さあ 新しい昨日をつくろう

  

万有引力
     大島千世子

地球には宇宙から輝かしい光が届けられている
海は水で満たされている
空も陸も海も ひとの心に 愛する場を与えている
山はそびえたっている
森は樹々を育くんでいる
けものは それだけで交尾してのそのそと歩いている
鳥はオーラの中 飛んでいる
魚は自由に 漂よっている
子どもたちは たまにはころんで走りまわっている

人は宇宙をまるで知らない
万有引力でさえ いまだ発見にすぎないから
人は人をよくは知らないのかも
絶対音感をもつ人の才能と災い
そして私は 和の中にいては 輪を見てばかりで
自分の名前すら 時に忘れたくなる
・・千世子・・たくさんの世界をつなぐ子。

だからあなたと私をまったく知らないようです 他のひとたちは・・
名ばかりの平和の中 恋人という名も投げだしたい

まるで 水がひとつの道をみていて
河となって流れていくように
自在なる心は 海にかこまれた日本列島のエッジで
ただ 美しく在りたい
DOING  WHAT  I  LOVE
BEING  WHO  I  AM

 

チサと散歩
      太田奈江

休日の園児のチサと
丘につづく小径をあるいていました

足もとの砂利石に
幼い足をすべらせながら

道端の雑草をのぞいて
小花をさがすチサ

白い花 黄色い花
どんなに小さくても

かわいい かわいいとうたうように
小さな手がつんでいます

小さな花でも 純白のこころには
すなおに入ってくれるのでしょうか

やさしさときれいをこころに染めながら
げんきで旅をするチサになってね

まだ伝わらないことばを
そっとつぶやく目線の先に

透きとおった真っ赤なトンボの羽が
小枝のさきにとまっていました

                
花の根
    岡田優子

「すずらん」という花の店で
小さな鉢植の蘭を買った
茎には 白っちゃけた節(ふし)があるので
節から節へ 脱皮しながら
伸びていくように見え どきっとする

ねじれて 盛り上がった根
植木鉢の中は
祭のように せめぎあっている

白い小花を待ち焦がれたが
咲かなかった
それだからという分(わけ)ではないが
はみ出している茎を一本
根っこごと
切子硝子に挿してみた

七日たち十日も過ぎた頃
水底でふらふらと漂っていた根が
確りと 水を掴んでいた

この世はいま
瞼を閉じたように暗いけれど
幼いトンボの羽のような
浅い緑の葉っぱが
茎の天辺で 両手を広げている
幸せを育てているのだった

星々と友に
           おさや川静子

日が暮れて
今日も夜空に満天の星
『すばらしき650億年前の星々よ』と
 学者がつぶやく
共に眺める「天空博士」も心を籠めて
『宇宙の不思議は、まだまだ幾つか!』と話す

ならば、地球上に住む人々も又不思議
宇宙に輝く何処かの星にも、人がいて
此の地球を眺めて何を思うだろう
心のときめきは計り知れず

そうだ!
地球と言う星の暖かいカーテンを開けて
大切な宇宙との和を考えて見ないか
さあ、啀(イガ)み合っている人達よ
心を開いて争いをやめ
共に明るく瞳を重ねて

ひそやかな夜空の星々と向き合い
宇宙の未来を語ろうよ

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